哲学することは力になる〜田中正人『哲学用語図鑑』〜
息抜きに読んだ『哲学用語図鑑』は、
なかなか面白かったです。
この世の中はなぜこうなっているのか、
人間とは何か、
社会とは何か、
そんな根本的な問題に、まっすぐ向き合ってきた人たちの思考の結晶が、
わかりやすい文と図解でまとめられていて、
さらっと抑えるのにちょうどよかったです。
1時間半程度で読んで、
古代から現代までの哲学や思想の流れを整理できましたし、
自分の思想や思考がどのような流れの中に位置づいているのかを、
改めて考えてみることができました。
人間、人生、社会、世界、経済などに関するさまざまな問題に対して、
これまでいろんな人が考えてきたわけで、
哲学の基本的な知識を持っていると、
考える道具を手に入れられてよいと思います。
例えば、
ドゥルーズとガタリによるスキゾとパラノの概念は、
堀江貴文の『多動力』と重なります。
ドゥルーズとガタリは、
スキゾ的生き方を理想としました。
それは、
欲望のおもむくままにその時その時を楽しみ、
あらゆる価値をこだわりなく受け入れる生き方です。
反対に、パラノ的生き方とは、
あらゆることを自分の価値基準の領域に囲い込み、
「自分はこういう人間である」というアイデンティティに過度にとらわれ、
社会的な役割に縛られ、他人の評価を気にしながら、多くのしがらみを背負って生きる生き方です。
欲望を発散させるか、収縮させて統合させるかですが、
現代のようにさまざまな刺激があり、
変化が激しく、価値観も多様な社会になってくると、
パラノ的生き方は苦しいものがあるかもしれません。
ドゥルーズとガタリは、
自分の領域に知識や財産を溜め込むと身動きが取れなくなり、
縛られていくことになります。
そこで、
多種多様な価値の領域を自由に横断する生き方であるスキゾ的な生き方として、
ノマドに注目したのでした。
今となっては、
ノマドの働き方や多くの肩書を持つこと、
パラレルキャリア、
ということはあたり前になってきましたし、
堀江貴文が『多動力』の中でも書いている通りですが、
哲学的にも説明がなされているのです。
西洋的な思考としての体系化や弁証法ではなく、
差異をありのままに認める思考の重要性に気づいたところから、
スキゾ的な発想に至っているのが興味深いですね。
ドゥルーズとガタリの『千のプラトー』はまだ読んでいないのですが、
読んでみたい1冊になりました。
哲学的に徹底的に考えてきた人たちの思考は面白く、力になります。
<まとめ>
■古代から現代まで、さまざまな哲学者が、
人間や社会の問題を考えに考えてきた。
素朴な疑問に徹底的に向き合ってきた人たちの思考から学べることは多い。
■自分や今の社会が、どのような思考や思想の流れの中にあるのかは、
知っておく必要があるだろう。
あたり前のことすら疑い、考えぬくのが哲学である。
■例えば、ドゥルーズとガタリが考えたスキゾ的生き方が、
なぜ、今の社会で求められているのかというのは、
大きな社会や思想の流れの変化を追ってみればわかる。