『社会人と学生のキャリア形成における専門性』

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文系が社会を動かし、理系が社会を進める。
本書を読みながら、ふと、その言葉がよぎりました。

キャリア形成において、専門性が大事だ。
自分には専門性がないから転職ができない。
専門的な能力を身につけるべき。
そういうことが言われる一方で、
では、大学では、専門性を身につけさせることができるのだろうか、です。
医学部や法科大学院の学生と比べて、非専門系学部として、”国公立文系”と”私立理系”の学生への質問紙調査(意識調査)をもとに、専門性への志向やキャリア決定への意識を明らかにしようとします。
精緻にみていくと、
医学部生の職業への志向は、ちょっと違うんじゃないか。
そんなに仲間やチームで働く仕事を希望しているのだろうか??
とかありますけど、全体としては興味深いです。
国公立文系の方が、私立理系の学生よりも労働観がポジティブである、というところがおもしろかったです。
理系の方がいわゆる専門性はありそうですけれども、本書で定義している専門性の概念がわりと広いので、迫りきれていないものもあるのかな、と思います。
結局、日本では、社会人基礎力やコミュニケーション力などを重視するので、専門性を大学の段階で求めたり、養成するのは難しさはあるけれども、学生がいろんなことに興味を持って自分で専門性を高める工夫をする余地があるのではないか、という主張は、そうだろうなぁ、という着地点です。
時代は本書の段階からもう少し進んで、人工知能に関する知識や、プログラミング、アプリ開発、統計的知識、ビックデータの解析、などの専門的な知識をもった学生を企業も求めるようになってきているだろうから、また違ってきているでしょうね。
そのあたりまで考えて、冒頭の、社会は文系が動かし、理系が進める、
というあたりと、ポジティブな労働観のあたりに戻ってきます。
文系の専門性、って、どんなもので、大学でどこまで育めるものなんでしょうね。
本書の限界で指摘しているように、医師、ロースクール生、国公立文系の学生の自己肯定感の高さが、単にポジティブな労働観につながっているような気もします。

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