『世界は贈与でできている』

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世界は贈与でできている。
問題は、その贈与に気づけるかどうか、である。
「生きている」から「生かされている」への転換が、多くの人の語りに現れてきますが、本書も、そんなことを念頭におきながら読みました。
興味深いのは、贈与は、受け取ることから始まる、という部分でしょうか。
私たちは何かを受け取ったと認識した際、それに対するアクションが求められます。
返礼をする、
次の世代に渡す、
それに応じた何かを果たす、などなど。
等価交換とは異なる論理で関係を育み、過去と未来という時間軸を含みながら続いていく、贈与。お金では買えない価値について、あらためて考えさせてくれる本です。
贈与する側も、贈与を受け取る側も、教養や感性が求められますね。

ところで、資本主義の「すきま」を埋める倫理学と副題にありますが、贈与は「すきま」を埋めるというよりは、もっと積極的な意味合いをもっていると考えられます。
それこそ補いあう関係性であり、網の目のように編み込まれた社会と経済にこそおもしろさがあるな、と感じます。

"贈与者は名乗ってはなりません。名乗ってしまったら、お返しがきてしまいます。贈与はそれが贈与だと知られない場合に限り、正しく贈与となります。しかし、ずっと気づかれることのない贈与はそもそも贈与として存在しません。だから、贈与はいつかどこかで「気づいてもらう」必要があります。あれは贈与だったと過去時制によって把握される贈与こそ、贈与の名にふさわしい。だから、僕らは受取人としての想像力を発揮するしかない。"
(p.93)

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