『学びの実践学 -教師に必要なこと、ラーメン店主の学びにあり』
ラーメン店主の学びを、非常に壮大に、まじめにかつ遊びに満ちた考察で仕上げた1冊。
ラーメンと店主に対する愛も感じられて、おもしろいです。
日本において独自の発展を遂げるラーメン。
伝統的なものから、革新的なもの、
ご当地ラーメンから、海外進出したラーメン。
愛好家、評論家なども多いこの世界で、
店主はどうやって学び、成長し、オリジナルの1杯をつくるのか。
「修業」やのれん分けといったシステム、徒弟的なシステムと同じく大切なことに、独学と食べ歩きを挙げ、さらに「修業」ではなく終わりなき「修行」にこそラーメン店主の学びの特徴があると指摘します。
自分の足で食べ歩き、食材を探し求め、顧客や評論家による評価とも対峙する。
ラーメン業界の環境だからこその部分もたしかにありそうで、ラーメンの多様性と発展を支える店主の独学と修行は、まさに生涯学習でもあります。
衰退していく業界と比べてみると、その特徴がより際立つかもしれません。
本書では、さらに重要なこととして、理論と実践の関係をめぐる考察も深いのですが、まぁ、やっぱりラーメン店主の学びと実践がおもしろいですね。
"ラーメン店主は、まさにラーメンに対して己を開き、ラーメンづくりの過程でさまざまな事物や人とかかわり、そのかかわりの中で、食べ歩きや出会いや試食会等を通じて、己のラーメンを見いだし、ラーメン店主としてのコンピテンスを習得していく。
ゆえに、こうしたコンピテンスを、本書では「ラーメン・コンピテンシー(Ramen-Competency)」と名づけたい。"
(p.157)